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最後の遺跡発掘。

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最後の遺跡発掘だった。

 

最初の日を思い出す。ああ、なんてところに来てしまったんだろうと思った。

知らない人。年の離れた人。警戒すべき人。敵と言える人。

そんなふうに思っていた。

私にとってあそこは苦行だったはずだった。

息苦しさと引き換えにお金をもらう場所だった。

 

それが、最後の日、今日はどうだっただろう。

寂しくてたまらなくなった。

この人たちと二度と会う事は無いんだと思うと、やるせなかった。

多分私たちは人生の中でほんの一瞬交わっただけの人で、その後はただひたすら違う方へちがう方へと流れていくんだろう。

その一瞬が、今だったんだろう。

 

ここで何度も泣いた。たくさんの人に迷惑をかけた。何度も吐いた。

でも私は、最初のバイトがこの現場だったことを本当に幸せに思う。

最初のバイトでこんなに良い人たちに恵まれた自分を、幸福だと信じる。

 

 

お世話になった方、NさんとTさんの写真を撮らせていただいた。

現場を背にした二人は、恥ずかしそうにはにかんでいて、それがとても可愛いと思った。

早速待受にした。

これで、私は二人のことを忘れないでいられると思った。

私は自慢にもならないが記憶力が全くないので、かたちあるものを残しておきたい方だ。

「この写真は宝物にする」と言うと「よく言うよ」とNさんは笑っていたが、私にとっては全く嘘ではなかった。

本当に宝物だ。人生での輝かしい一瞬の一ページだ。

大好きだった。

 

その後会社の方に行ってNさんの手から二月分の給料をいただいた。

自分が働いた日と、それに伴う報酬。

それを手渡されて私は、こんなに価値あるお金はほかにないと思った。

こんなにお金をもらう程の働きは私はしていないのに。

Nさんに「大事に使ってくれよ」と言われた。

大事すぎて使えないよ。

自分で働いて、Nさんから貰ったんだから。

 

今日、私は例のごとく体調を崩して三時で終わりにしてもらった。

Tさんに「今日は三時にしてください」と言って、それが認められて

私の初めてのバイトはあっけなく終わった。

なんか悲しくなっちゃって、車でずっと泣いていた。

死のうかと思った。

でも、大事な人が電話してくれたおかげで、そんな考えもなくなった。

あなたがいなかったら私、また入院してたかもしれない。

もっとひどければ、また未遂してたかもしれない。

ありがとう。

 

終わったあと給料のことでTさんのところにいると、Tさんに「庄内さん」と呼び止められた。

不思議に思いつつ振り向くと、Tさんが付箋に文字を書く。そして私に見せてきた。

それを読んだ私が驚いてTさんを見ると、Tさんは笑いつつ紙を握りつぶした。

かっこいい大人だと思った。

なんで結婚できないんだろう?(笑)私だったらこんな人と結婚したい。

こんな大人になりたい。

憧れる人だった。

 

私はこの現場の人たちが大好きだ。

また会えたらいいな。そうこころから願っている。