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退院。

退院した。

一週間とはいえ、いか月前には三か月近く入院していたところだ、名残惜しい気も僅かにあったが、看護師にも言われたように「ここは私のずっといる場所ではない。」。私の居場所のように、勘違いしてはいけないと思った。

あそこは優しい。いろんな意味で。

社会から隔絶された場所、彼らの鳥籠、僕らをかくまってくれる場所。

いろんなイメージはあるが、あそこは僕の中ではゆりかごだ。

厳しいけど、優しい場所だった。

「コンビニ人間」の中で、コンビニは淀みなく流れる完成された場所と書かれていたが、それは病院も同じだと思う。

病院は大きな機械のようだ。看護師や医者、ワーカー、そして患者が、ひとつひとつちいさな歯車となってその大きな機械を動かしているのを感じる。

だから不思議と気が狂わなかったのかもしれない。患者なら患者、医者なら医者、看護師なら看護師で、自分の役目に忠実に動いていれば済むから。

それがあの機械の中での、私たちの役割だったから。

以前銭湯に行って、幼女の裸を見たとき、あばらが浮いた腹をみて、「この中に臓器が収まっているなんて信じられない」と思ったものだ。人間の体もまた、機械のように精密だと思う。それに加えて、生き物は柔軟さや俊敏さも兼ね備えているけれど。

こんなにちいさくて、薄い体でも生きているというのが、あの時の僕にはとても不思議だったのだ。この世のことはもう大半知り尽したような気になっていたけれど、あの箱の中には、そういった不思議があふれていた。

なんでこの子が?なんであの人が?なんで私が?

何で死んじゃいけないのか?なぜこんなにもつらいのか?なぜあの子は救われないのか?なぜ手首を切ると安心するのか?

なんで私は生れてきたのか?

 

自分が世界で一番つらいような気がしているくせに、そう思っているほかの人のことを自分より辛くないと決めつけてしまうのはなぜだろう。

こんなにつらいのに、何で死んではいけないんだろう。

そう思う僕は、主治医の仰ったような命は公共物という言葉の意味を理解できていないんだろう。なんでわからないんだろう。

なんでぼくはこんなに人より劣っているんだろう。なんでわたしなんかが生きていなくちゃいけないんだろう。なんでこんなにも涙が止まらないんだろう。

死にたい。そう思うときが、私にはある。